日本の刑務所
岩波書店
菊田幸一
ISBN4004307945
選挙権は? 食事は? 面会は? 規律は?
閉ざされた世界を検証する
そして国際的な基準は?
≪日本の刑務所≫
刑務所に入るとどんな権利が剥奪され、どんな日常生活を送るのか。
面会、通信、刑務作業、累進処理の制度、懲罰などは、
実際どのように行われているのか。受刑者からの聞き取りや、
獄中から待遇改善を訴えた裁判例に基づいて実情を紹介し、
国際的な人権規約や諸外国の例に照らして、日本の受刑者処遇の問題点を検討する。
日本における刑務所収容者の特色は、第一に、累犯者を含め、
繰り返し入所する者が多数を占めていることである。
累犯者というのは、懲役刑で刑務所に入っていたが、出所後
五年以内にさらに罪を犯して有期懲役に処せられた者である。
(刑法第五六条)累犯者を含め刑務所へ二度以上入所してい
る、いわゆる頻回入所歴を有する者は、全収容者のうち
二〇〇〇年で五二・五パーセント(男子)になる。つまり
初入者より再入者が多い。なかでも五度以上の入所歴を有する
者が、このうちの三割以上を占めている。彼らの前刑は
コソドロと覚せい剤事犯が多数である。
第二の特色として、結果的に受刑者が高齢化している。
六〇歳以上の高齢受刑者は、かっては一パーセント台であった
が、一九八四年にはじめて二パーセント台となり、八九年には
四・三パーセント、二〇〇〇年末には九・三パーセントとなっ
た。一〇年近くで倍増している。
第三の特色は近年の受刑者全体の四人に一人までは覚せい剤
事犯者である、ほぼ同じ割合を暴力団関係者が占めていること
である。このことは、矯正効果を期待することのむずかしい
ケースがいかに多いかを示している。
現在の受刑者の特色は罪の意識が薄いことである。
ならば、これらの受刑者には、より厳しい罰を科すべきでは
ないかとの意見が出るかもしれない。
しかしその指摘は間違っている。罪の意識が強いか弱いかに
関係なく、刑罰優先で受刑者に対処することによって何も得ら
れなかったことは、これまでの歴史が証明している。
こうした受刑者が、かりに厚生意欲をもって刑務所を出ても、
出所後の経済的不安と同時に、健康、前科、住居等あらゆる
生きるすべについて障害がある。現実として、その半分以上が
再び刑務所に戻っている。刑務所内での矯正教育が一方的な
上からの押し付けだけでは、受刑者が無気力となるばかりで
あろう。本人の社会復帰を支援し、ひいてはわれわれ社会の
最終的な利益に連なるようにできるかが、こんにちの刑罰思想
の共通認識として問われている。
(本書はじめにより)
目次
第一章 受刑者とはどのような存在か
1自由の拘束と受刑者の扱い
刑務所への押送/入所時の検査/制約された人権他
2市民としての権利の制限
どの権利が剥奪されるか/選挙権および被選挙権/住民票他
3国際的視野から見る
第二章 刑務所の日常生活
1衣と食
食事/食費/食事内容の差/衣類他
第三章 外部世界とのつながり
1手紙と検閲
2面会
3新聞と図書
第四章 刑務作業は労働か
1外国人受刑者の問題提起
2刑務作業と賞与金
3賃金制は不可能か
第五章 規律と懲罰
1軍隊方式の規律
2保護房・厳正独居
3不服申立制度
受刑者の社会復帰を妨げるもの
刑務所が社会的存在であるからには、受刑者の社会復帰に向けた
ものでなくてはならず、可能な限り社会に開かれた刑務所として、
社会との連携の姿勢がなくてはならない。刑務所が一般社会から
遊離することは、即ち、受刑者の社会復帰を困難にさせるもので
ある。刑務所管理のもつ役割は、犯罪者対策の限られた一部だけ
であり、受刑者の全生涯を支配するものであってはならない。
(本書おわりにから)
700円(税別)
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