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豊かに老いを生きる
春秋社
日野原重明
「愛すること、耐えること、創めること」
日野原重明
年輪を重ねることで初めて見えてくる風景もあります。
人生の午後を実り豊かに過ごすために
90歳を超える現役医師からのメッセージ。
皆さんや皆さんのご主人で定年が間近な人が
ここには少なからずおられるでしょう。今
までは役所とか会社などの様々な大きな船に乗っていた。
しかし、五十五歳になワ、六十歳になりますと誰もが
その船から降りなくてはなりません。二人乗りのボートとか、
あるいはやもめであれば一人乗りのボートに降ろされる。
今までは船が大きなシステムとして動いていたのですが、
これからは皆さん一人一人が櫓を漕いで進まなければなりません。
そのとき、自分は一体どこに向かって櫓を漕いだらいいのかという
選択に迫られる。そして今までそのようなことは考えたことも
なかったということに気づかされるのです。そこで、皆さんは
孤独を意識することになります。
自分は何なのか、それを発見することが迫られます。
その際、ぜひとも考慮に入れてほしいことがあります。
自分のことだけを考えるのではなく、他人のことをも考える。
日本だけでなく、南半球のことも考える。
健康な自分や自分の家族だけでなく、
治らないエイズになった人のことも考える。
アフリカには生まれながらにしてエイズになっている赤ちゃんが
何百万といるわけです。そして数年で死んでしまう。
そういう、他への配慮を気持ちの中に入れるということです。
そのような生き方の転換がなされるべきです。
そして、自分の行く方向を決めて行動を選択することができるような
人間になるように自分で自身を訓練しなくてはなりません。
その際には、良き友がいることが必要です。
あの人のように私も行動したいというような人生の先輩、
あるいは若い友を持つことができれば、人生の午後になって
意味のある生活を選択することができるのです。
体はどうせ老いていくものですから、その中にあるその人の精神や魂と
いうものが健やかになることが人間としては最も望ましいことなのです。
心身共に健康であるというような理想的なことはそうそう望めることではありません。
体は弱〈ても、年をとっていても、心が健やかであることの方が大切です。
そして、いつも他人のことが配慮できる人間になることを目指すべきです。
(本文「自分自身の羅針盤を持つ」より)
1333円(税別) |