太公望(中)
文藝春秋
宮城谷昌光
ISBN 9784165070900
超えてゆく者
貴門を貴族と考えれば、それを超えるのは王侯のみである。
奴隷をのぞいて、この世で最下級にいる男子が、
君主になるかもしれない。
小魚が虹橋を渡って龍と化す、
そういうことが千に一はあるかもしれない.....
受王の時代、王朝はかつてない隆盛をむかえた。
この受こそ紂王と呼ばれた苛烈な天子で、望の父を殺し羌族をさいなんだ男である。
妻子を得て春陰にたたずむ望の胸中には、焦燥あるばかりであった。
周公を中心に諸侯は策謀しつつある。
しかし独り時代の先を視る望の苛烈な生は、
人知れぬ哀しみにみちていた。ひとは己れを超えねばならぬ、
あたかも小魚が虹桟を渡り竜と化するように。利に争うものは敗れ、
怨みに争うものは勝つ、そしてそれを超えるとは。
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