新・仁義なき戦い
角川書店
[ノベライズ] 松本賢吾
[原作] 飯干晃一
[ベーシックストーリー] 高田宏治・坂本順治
ISBN 4043559011
追悼深作欣ニ監督
現代ヤクザ映画の原点となったあの
『仁義なき戦い』がニ一年ぶりに蘇る!!
完全ノベライズ!!
昭和三四年夏。
西大阪の貧民街で育った二人の少年、
門谷甲子男と栃野昌龍は、ヤクザを一人殺した。
甲子男は姉を死に追いやられ、昌龍は父親が借金の取り立て
でいたぶられたことへの復讐だった。
それから三十年。
門谷は日本最大の暴力組織・左橋組の傘下、栗野組の幹部に、
栃野は大阪で韓国人ファミリー組織を築き、手広いビジネス
を展開していた。だが、佐橋組三代目が急死し、跡目争いが
激化。門谷と栃野はこの激動の中で再会を果たすのだが・・。
プロローグ
昭和三四年、皇太子殿下と美智子妃殿下のご成婚の儀があった
年の夏、住人の五人に一人は朝鮮人ら異邦人という、大阪市生野区猪飼野地域の
貧民街に住む不良少年たちは、ぐつぐつと煮詰まった鍋の中を泳ぐような状態にあった。
十一歳の栃野昌龍はそんな鍋の中で全身を炙られていて、同胞
の英雄力道山を崇拝し、身近に跋扈する朝鮮人愚連隊を憧憬の
眼差し眺める、火膨れしそうの熱い日々を駆け抜けていた。
栃野昌龍は韓国名を洪昌龍という在日韓国人で、仲間からは
ショウリュウと呼ばれ、数ある不良少年グループの一方の大将
だった。ショウリュウは朝鮮人を差別する学校が大嫌いだった
が、通学だけは欠かさなかった。給食があるからで、その日
はじめての食事が給食という日もすくなくなかった。
水ばかり飲んでいた。暗い目をぎらつかせ、あらゆるものに飢えていた。
今日もショウリュウは、汚れたメリヤスのシャツ、破れた半ズボン姿で、
夏休みを目前に控えた五年生の教室にいた。ひょろりと長く伸びた脚は
小さくなったズック靴の踵を踏んでいる。
給食時間がきて、白衣を着た給食当番が待望の餌を配って行く。
は自分の前に配られた牛乳を一息に飲んでしまうと、パントバナナと半ズボンのポケットに
突っ込んで、教室を出ようとした。
見咎めた担任教師の山田が怒鳴った。
「コラ、栃野。給食は教室で食わなアカンやろが!」
振り向いたショウリュウが三白眼になる。
「じゃかしいわい!いてまうど」
少年とは思えぬドスの利いた声に山田は息を飲み、気弱な笑みを浮かべて目を逸らした。
ショウリュウはくるりと背を向けて教室を出る。
「クソやで」
教師を罵り、パンを齧りながら校庭を横切る。もう今日は学校に用はなかった。
あとは適当な相手を見つけてどつきあうだけだ。
著者紹介
●松本賢吾(まつもと けんご)
一九四〇年
千葉県生まれ。警察官・屋台引き・警備員・墓石職人など
十数種類の職業遍歴を経て、九六年『墓碑銘に接吻を』(双葉
文庫)でデビュー。迫力ある描写、切れ味のよい文章から醸し
出される独特のぬくもりあふれるハードボイルド作品で注目を
浴びる。著書に『エンジェルダスト』(学研)『屑』(角川書
店)『魔弾』『時効』『戒名』(祥伝社)『トラップー罠』
(マガジンハウス)『窮鼠』『慙愧の淵に眠れ』(双葉社)がある。
新・仁義なき戦い。
571円(税別)