コンビニ・ララバイ

コンビニ・ララバイ
集英社 池永陽
 

コンビニ・ララバイ

集英社
池永陽
ISBN 9784087745863

とっても不器用で、素敵なあなたに...

小説すばる新人賞から3年半、心に滲みる7つの物語。
本の雑誌が選ぶ2002年上半期ベスト1!

小さな町の小さなコンビニ、ミユキマート。
オーナーの幹郎は妻子を事故で亡くし、幸せにできなかったことを悔やんでいた。
店には、同じように悩みや悲しみを抱えた人が集まってくる。
堅気の女性に惚れてしまったヤクザ、声を失った女優の卵、
恋人に命じられ売春をする女子高生…。
彼らは、そこで泣き、迷い、やがて、それぞれの答えを見つけていく―。
温かさが心にしみる連作短編集。

お人好しで商売気のない店長と、訳ありの店員さんにお客さん。
みんな何かを抱えて生きている。何かを求めてやってくる。
それぞれのはぐれた愛が切なくて、まぶしくて....
小さなコンビニの物語。

「毎度ありがとうございます」
すり抜けるとき、幹郎は愛想のいい声をかけてきたが、
加余子は無言を通した。 今日はもう引きあげたほうが無難だった。
チョコレートと、それに男性用の整髪料もすでに手提げのなかに入っているのだ。
そのつもりで何気なくカウンターに目を向けると治子が加奈子を見ていた。
真剣な表情だ。胸が騒いだ。
呼びとめられてバッグのなかを探られればそれで終りだ。ぞくっと体が縮む。
さっきとはまた別の快感が全身を走る。
加余子は背中全部を目にして、それでも大股でちっぽけな
コンビニエンス・ストア『ミユキマート』の入口を出た。
治子は追ってこなかった。一気に脱力感が襲う。これも一種の快感だった。
待ち合わせ場所のハンバーガー屋に行くと、
満はすみの席に座りこんでダブルバーガーにかじり
ついていた。アイスティーだけを頼み、片手で紙コップを持って合流する。
「どうだった」
満が屈託のない声を飛ばした。
「ちょろいもんよ。はい、電話で約束したムース」
手提げのなかから整髪料の容器を取り出して満の前にとんと置く。
「さすが加余子だよな。これでもう買わなくてすむもんな。得しちゃったよな」
満は自他ともに認める優等生で通っている。
万引きとか恐喝とか、周囲から後ろ指をさされることは一切しない。
おまけに爽やかなスポーツマン、部活はサッカーでむろんレギュラーだ。
通っている高校も都内では有数の進学校で偏差値もずば抜けて高かった。
加素子の通っている女子高とはかなり格が違うが、
二人は近所同士で中学三年からの恋人関係にある。
「しかし加奈子にそんな特技があるとはな」
コーラを一気に飲みほしていう滞に、
「あの店は特別なんだ。変な店なんだ。他の店では絶対無理なんだからね」
加奈子はむきになったようにいってロを尖らせた。
(「第六話 オヤジ狩りの夜」より)

■目次
第一話 カンを蹴る
第二話 向こう側
第三話 パントマイム
第四話 パンの記憶
第五話 あわせ鏡
第六話 オヤジ狩りの夜
第七話 ベンチに降りた奇跡

■著者紹介
池永 陽
1950年愛知県生まれ。グラフィックデザイナーを経て、
コピーライターとして活躍。
98年、『走るジイサン』で第十一回小説すばる新人賞を受賞し、
作家デビュー。

1600円(税別)


コンビニ・ララバイ 集英社 池永陽 単価 1,600円 購入数

備考


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