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藍色のベンチャー
上巻
新潮社
幸田真音
ISBN4104633011
幕末に最先端産業を起業する!!
商いの醍醐味、職人の誇り、官と民の闘い、
そして夫婦の情愛を丹念に描いた、著者初の経済歴史小説。
「商いとは、時代を読んで攻めていくもんや」
江戸末期、京で流行る染付け磁器は当時の最先端産業だった。
この華麗な藍色の器に魅せられた男が妻の助けも借りて
「湖東焼」という新事業を立ち上げる。藩主・井伊直弼も
巻き込んだこの新しい挑戦に勝機はあるのか!?
序章
虫の知らせというものが本当にあるのだとしたら、
あの日の朝のようなことを言うのだろうか。
絹屋半兵衛の妻留津は、ふと五日前のことに思いを馳せ、
ひとつ大きく息を吸い込んだ。
安政七年(一ハ六〇年)の三月三日。前日から、寒の戻りとか
名残の雪などと呼ぶには烈しすぎるほどの大雪に見舞われ、
その朝留津は、柱や梁がきしむような、不吉な音で目を覚ました。
近江の国、彦根の城をもかき消すほどのときならぬ雪は、
ひとしきり降っていたかと思えば止み、しばし止んだかと思えば
また降りはじめるといった様子で、めずらしく一尺半(約45センチ)ばかりも降り積もった。
「雪は、まだひどいのかいなあ」
半兵衛は、留津より先に目覚めていたらしい。
このところ、いつになく身体の不調を訴えていたのだが、布団の
上で大義そうに寝返りをうち、そのたびにきまって咳きこんでいる。
「風は、きつそうですけど・・・」
留津はゆっくりと目を開きはしたが、布団のぬくもりからひと思いに
抜け出す決心がつかないまま、半兵衛の方を向いてそう答えた。
(本文より)
目次
序章
第一章 起業
第ニ章 絹屋窯
第三章 出会い
第四章 藩窯
藍色のベンチャー 上巻 新潮社 幸田真音
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